わが町の隠れ吉利支丹にまつわる話 そのニ
自分が住んでいる町から二十キロほど離れたところに、博物館明治村という施設があります。
ここは全国的にも結構有名なので、ご存じの方も多いのではないかと思います。
ここ明治村は明治時代を主にして、当時に建てられた歴史的、文化的価値があると認められた建築物や当時の車両、蒸気機関車等、七十近くの施設がおよそ百万平方メートルの中に点在しており、その殆どが重要文化財、有形文化財に指定されています。
自分が建築物のなかで特に好きなのは、フランクロイドライト設計の、旧帝国ホテル玄関口で、あのレトロモダンなデザインは本当に素晴らしく、一見の価値があります。
ある時、家族で明治村へ観光に行く機会があり、入り口ゲートから入って地図を片手に順番に施設を回っていきました。
そのちょうど途中にあった、ある教会の中へ入った途端、自分は何故だか其処から動けなくなってしまい、後から追い着くから先に行ってて欲しいと家族に頼み込んで(怪訝そうな顔をされましたが)、それから三十分ほどはその場所に居続けたでしょうか?
はっきりとお伝えしておきますが、自分はそれまでクリスチャンなどではなかったし、ましてや教会にも行ったこともなく、全くキリスト教とは縁もゆかりもないごく普通の生活をしていた人間でした。
そのときの衝撃というか、何か懐かしい感じというか、えも言われぬデジャブのような感覚は今でもはっきりと覚えています。
今にして思えば、そのときは混乱していたというよりも、ただ自分の魂が感じるままに本能に従ってその場所に留まっていたのでしょう。
そのようなことがあってから何ヶ月か経った後、今度はひっそりとただ一人で明治村まで出掛けて行き、心ゆくまでその教会の礼拝堂で何をするということもなく、ひたすらゆったりとした時間を堪能致しました。
続く
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