コルカタの聖テレジア マザー・テレサ その三
我が国ではある程度のセイフティネットが機能しているので、餓死するような貧困や、路上で石ころのように死んでいたというようなケースは希ですが、インドではカースト等の悪習があるせいか、路上で人が死んでいるのは結構日常茶飯事なことです。
日本に於いて本当に深刻なことなのは、心の貧困を抱えた人がとても多いということです。
前章でもお話しした通り、本当に辛いのはお金や着るものや食べ物等の物質的な貧困ではありません。
食べるものが無いことは、周りの配慮で何とか満たすことが出来ます。
たとえどんなに豊かな世界であっても、本当に貧しいことは、魂の孤独、自分は誰からも必要とされていない、誰からも愛されていないといった、心の闇の中での絶望感を味わうことで、それほど辛くて苦しいものはありません。
そういった心の内面の飢えや渇きは、表に出ない分、取り除くことは非常に困難なのです。
マザー・テレサは、日本からやってきたボランティアの人達にこのような話をしています。
あなた方はわざわざ遠い日本からインドヘ来られましたが、繁栄した日本には物質的な貧困はあまりないでしょう、でもあなたの周りには心の貧しさを抱えた人達が沢山いらっしゃいます。
あなた達は日本で、どうかご自分の周りのそういった方たちを救ってあげてください。
マザーは1981年から三度、日本を訪問して居ますが、日本の現状を、神に裏打ちされた確かな心の目で喝破しています。
日本における公演で彼女は、物質的には豊かである筈の日本でも、精神的に飢えて疲弊している人達が大勢いること、その人達に対して周りの者がもっと目を向けて救いの手を差しのべなくてはならないということを伝えています。
さらに、このようにも話しています。
貧しい者は、パンに飢える人や路上生活者だけではありません。
豊かさの中にあっても、愛に飢える人、社会から見捨てられる人はもっと貧しい。
それよりももっと困難なのは、精神的な飢え、愛の渇き、心の飢えの方です、と。
続く
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