苦節○○年 世界に羽ばたく日本のメタルバンド 最終回 前編

今回でこのトピックも終わりにしようとおもいましたが、あまりにも書かねばならない事が多すぎて急遽最終回を前編と後編に分けることにしました(笑)。


今回はお楽しみ曲がいっぱいありますよ。


「人間椅子」は三人組の極めてシンプルなバンド編成でありながら、曲を聴くととてもたった三人のバンドだとは思えないような重厚なサウンドで、それぞれのテクニックとキャラがしっかりと立ちつつもバランス良くまとまった実力を兼ね備えたバンドです。


そして彼等の音楽性も前回お話しました通り極めてユニークであり、日本はおろか世界でも唯一無二と言っても良い彼らにしか出せない音作りを追求してきましたが、そのアクのある個性が時代とマッチしなかった時期がデビューしてから暫く続いた時期も確かにありました。


彼等がデビューした頃は高度成長期の残り香が未だ続いていた時代で、独特な雰囲気や当時としては特異な曲調からキワモノバンドのような認識をされ、暫くインディーズでの活動を余儀なくされていました。


和嶋さんのLINEでのお返事通り、なかなか自分達の音楽が世間に受け入れられなかった時代が続いて、実際にバンド活動意外にバイトを余儀なくされていた時期が長らくあったということなのです。


しかし和嶋さんは本屋でのバイトをバンドの傍ら続けていたそうで、彼等の楽曲の多くの作詞を彼が手掛けているのですが、彼の書く詞が本当に独特で古典的な言い回しも多用されており、おそらく古今東西の書物をバイトの折に読み耽って素養を養っていたのでしょう、彼の造詣の深さが詞の行間からしっかりと滲み出ています。


本屋での長らくのバイトの経験やその時代の彼の生き様が、作曲や詞をつくるうえでの糧となっていたのでしょう。


また彼等の曲は総じて長く、多くの曲の途中から曲調がガラリと変わる曲も多くて、和島氏のギターソロが突然始まる辺りはイギリスの70年代のプログレロックを彷彿とさせるものがあり、昔のロックを聴いていた世代には懐かしくもあり堪らない魅力なのです。


ボーカルについては殆ど和島氏と鈴木氏が交互に受け持っていますけれども、ライブでは一曲だけアニキ(ドラムのサイトウノブ氏)が歌うのが近年の恒例となっている様です。


さて、ここで彼等の曲もご紹介しましょう。


と言っても彼等は今迄に三十三枚のアルバムを出しており、世に出された曲の数は数百曲にものぼりますので、独断と偏見で何曲かご紹介したいと思います。


まず、「人間椅子」をご存じない方のために比較的聴きやすい曲をご紹介すると、何と言っても彼等の最大のヒット曲であり、海外にその名が知られるようになった切っ掛けの「無常のスキャット」、そして新譜からPV画像が全編CG処理されてつくられた「さらば世界」をお勧めします。

https://youtu.be/CbI79e5iZKs?si=E9xqIqu1g1ZO5Qkf

https://youtu.be/PAHig2tFeLw?si=6cEz7eEYKdFR-EJm


過去の曲で好きなのは江戸川乱歩のミステリー小説から着想を得た、明智小五郎でお馴染みの「怪人二十面相」、テーマ曲と言っても良い位にメロディアスでとても聴きやすい曲です。

https://youtu.be/m-BT87Y3P_M?si=RIWR9WWG4SGKRLIZ


それと結成当時の傑作「針の山」と「りんごの泪」も外せません。

https://youtu.be/LX16wSl5rN8?si=lzcIa_1u6kW5bUd2

「りんごの泪」は高度成長期、青森や東北から集団就職でお国から東京へ出ていった女子学生達をりんごという青森の名産に例えて歌われたもので、弘前出身の如何にも人間椅子らしい曲です。

https://youtu.be/mAO8mGuXbi8?si=s6x4lI8ymd3qFkdE


そして数ある曲の中で自分が個人的に一番好きなのは、日本的な和のメロディや古典から着想を得た「品川心中」、これは江戸落語から題材を取った曲で、曲の途中に和嶋氏の落語が入っているのがミソです。

https://youtu.be/OLNmIk5yNG0?si=4Tlhcg9TZzbvQmLI


あと、映画「いとみち」の挿入歌で使われた「エデンの少女」、この映画は津軽のとある女子校生が、自分の言葉のコンプレックスを治すために津軽三味線などを通して青春を謳歌してゆくという「人間椅子」ならではの映画であり、意外と言えば何ですがこういった爽やかな曲も彼等にはあるんですよね。

https://youtu.be/izaqqmbtKoc?
si=tzegYtQTmmLbuysj


他にも「洗礼」、「今昔聖」、「芳一受難」、「羅生門」など好きな曲は沢山有りますけれども、最後にベースの鈴木研一氏の曲を一曲。


彼は「地獄」シリーズと言われた曲の数々や、どちらかと言えばオドロオドロしい陰鬱な曲を得意としています。(これはあくまでも彼のキャラであって実際の彼はMCもとても面白い正反対の明るい人です、彼にはねぷたが服を着ているような一種独特の雰囲気が有ります)


「芋虫」という曲も、江戸川乱歩の短編小説から着想を得た曲なのですけれども、詞は思いっきりネガティブで、自分は実際の芋虫は時が経てばサナギになりやがては美しい蝶へと変身していくのでこの手の小説は生理的におそらく読みませんし、あまり共感はしてはいません。


しかし何と言っても出だしの哀愁をおびたむせび泣く様な歌い出しから曲の途中から突然ガラリと曲調が変わり、鈴木氏のドスの効いた声と和嶋氏のギターが絡み合って最高に心地良い壮大な大団円と展開していくのです、自分にとって鈴木氏のベストは絶対にこの曲です。

https://youtu.be/-vJEMwLH-kM?si=c6vrQMZi2P9DpRN-


さて、いよいよ次回は最終回、ライブの様子などもお伝えします、お楽しみに。

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